3条1項3号は、商品やサービスの特徴を「普通に表示しているだけ」の商標を登録できないとする規定です。こうした商標を実務では「記述的商標」と呼びます。条文が挙げる特徴は幅広く、商品なら産地・販売地・品質・原材料・効能・用途・形状・生産や使用の方法・時期・数量・価格、サービス(役務)なら提供の場所・質・提供の用に供する物・効能・用途・態様・提供の方法・時期などが対象です。
なぜ登録できないのか
理由は2つあります。一つは、これらの言葉は誰もが商品やサービスを説明するのに必要なので、特定の一人に独占させるべきではないという点(独占を認めるのが適当でない)。もう一つは、説明の言葉では「どの事業者の商品か」を見分ける目印にならないという点(自他識別力がない)です。この2つが3号の背骨になっています。
商品の特徴ごとの具体例
産地・販売地を表す言葉が典型です。地名がこれにあたり、たとえば調味料・香辛料についての「PROVENCE(プロヴァンス)」、時計についての「Veneto(ベネト)」は、その土地の産物・産地を表すにすぎないと判断された例があります。「那須山麓」「嬬恋高原」なども産地・販売地の表示とされました。おもしろいのは、実際にそこで作っていなくても、需要者が「その土地のものだろう」と認識すれば該当する点です。
品質を表す言葉も該当します。「特上」「一級」「一番」「スーパー」「よくきく」などが典型例です。商品の内容を示す場合も含まれ、たとえば書籍についての「商標法」「小説集」、録音済みCDについての「クラシック音楽」が、内容=品質の表示とされます。
原材料を表す言葉。せっけんについての「トルマリンソープ」(トルマリンを配合した石けん)、ドーナツについての「ミルク」などが、原材料の表示と判断されました。
効能・用途を表す言葉。滑り止め材料についての「滑らない」を意味する語などです。
形状を表す言葉。「まるい」「四角い」のような形そのものを表す言葉や、立体商標で商品の形そのものの範囲を出ない立体的形状もここに含まれます。
役務(サービス)の特徴ごとの具体例
提供の場所は、そのサービスがどこで提供されるか(地理的名称など)です。審決例では、宿泊・レジャー関連の役務についての「清里高原」が役務の提供地を表すとされました。たとえば旅館・ホテルのサービスに地名を付けたものが典型で、「箱根(の宿泊サービス)」のような表示はその提供場所を示すにとどまる、という発想です。
質は、サービスの内容・中身です。審査基準が比較的はっきり例を挙げている部分で、放送番組の制作についての「ニュース」「音楽番組」「バラエティ」、録音済みコンパクトディスクの貸与についての「日本民謡集」、映写フィルムの貸与についての「サスペンス」が、提供されるサービスの内容=質の表示とされます。また飲食物の提供について、特定の料理を想起させる地名(「フランス料理」「イタリア料理」「北京料理」を表す名称)も役務の質の表示にあたります。
提供の用に供する物は、サービスを行うために使う・供される物です。逐条解説や一般的な説明では、人の輸送についての「タクシー」、飲食物の提供についての「七輪」が例として挙げられます。サービスそのものではなく「そのサービスで使う道具・手段」を表す言葉、というイメージです。
効能は、そのサービスの効きめ・もたらす効果です。入浴施設の提供についての「肩こりに効く」が分かりやすい例です。ほかにも、エステ・施術系のサービスについて「疲労回復」「美肌」のように効果をうたう言葉が、これにあたると考えられます。
用途は、何のため・どんな目的のためのサービスか、です。審査基準に役務の明確な例示は多くありませんが、条文の趣旨からは、教育サービスについての「受験対策」、輸送サービスについての「引越(用)」のように、利用目的を直接表す言葉が想定されます。
態様は、サービスがどんなスタイル・形で提供されるか、です。逐条解説では飲食物の提供についての「実演」が役務の態様の例として挙げられています。一般的には飲食店のサービスについての「バイキング形式」「食べ放題」、宿泊についての「素泊まり」なども、提供のされ方を表す言葉といえます。
提供の方法は、どうやってサービスを届けるか、です。役務の明確な審査基準例は限られますが、趣旨からは飲食物の提供についての「宅配」「テイクアウト」、教育サービスについての「オンライン」「通信(教育)」のように、提供手段を直接示す言葉が該当すると考えられます。
時期は、いつサービスを提供するか、です。これも審査基準の明確な例示は乏しいですが、飲食店のサービスについての「24時間」、宿泊についての「日帰り」、清掃サービスについての「深夜」のように、提供の時間帯・タイミングを表す言葉が想定されます。
「普通に用いられる方法で表示する」とは
3号は「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」が対象です。つまり、ありふれた書体・構成で書いただけなら3号に当たりますが、取引で一般に使われる範囲を超えた特殊なレタリングやデザインを施せば、「普通に用いられる方法」を脱して登録の余地が出てきます。ただしその場合でも、文字そのものに識別力がないことに変わりはないので、登録後に文字部分だけを根拠に他人を排除する権利行使はできません(26条)。
審査では細かいところも見ます。たとえば「コクナール」「うまーい」「早ーい」のように長音符号(ー)を入れても、それを取り除くと「コクある」「うまい」「早い」という説明語になるものは、原則として記述的と判断されます。
記述的か、暗示的か ―― 一番もめるところ
3号で実務上いちばん難しいのが、「直接の説明(記述的=登録不可)」と「なんとなく連想させるだけ(暗示的=登録可能)」の線引きです。商品の特徴を間接的に連想させるにとどまる造語なら、暗示的商標として登録され得ます。
たとえば滑り止め材料の「スベラーヌ」は「滑らぬ」を連想させるとして記述的(登録不可)とされた一方、酵素製剤の「ハイチーム」は品質・性能をいくらか暗示しても、なお出所表示力を持つとして3号に当たらない(登録可能)とされました。同じ「連想させる」でも、結論が分かれるのが分かると思います。
記述的でも救済される道 ―― 3条2項
3号で重要なのは、記述的と判断されても3条2項(使用による識別力の獲得)で救済される可能性がある点です。長く使い込んで、需要者が「この言葉といえばあの会社」と認識するに至れば、登録が認められます。たとえば洋菓子の「アマンド」、ドーナツの「ミルクドーナツ」、「セロテープ」などは、記述的・暗示的とされながらも、使用によって広く認識されるに至ったとして登録・保護が認められた例です。これは、もともと識別力ゼロとされる1号(普通名称)や2号(慣用商標)にはない、3号〜5号ならではの救済ルートです。





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